インターネットの高速化において大切なことは、通信速度が自分の使用目的に対して十分な速度であるか、ストレスを感じない速度であるかという点です。
インターネットに接続するためのネット回線には、固定回線(光回線やADSL、CATVなど)や無線回線(WiMAXや3G/LTE回線など)など様々な種類があります。
この記事では、固定回線のアクセススピードに不満を持っている人のために、高速通信可能なネット回線を紹介する中で段階的なスピード改善の方法を説明ていきます。
インターネットアクセスの高速化のポイントとは?
速度に関する説明に、”ベストエフォート”とか、”ベストエフォート型サービス”という表現が使われているのをご存じでしょうか?
”ベストエフォート”とは、回線の理想的な状態での最大速度であるという意味です。理想的とは、回線をあなた一人が占有している状況で、かつ、使用環境の全ての伝送経路が回線の最高速以上の速度性能を持っているときに達成できる速度ということです。
このような前提での速度表示は、はっきり言って、実用上非現実的な値です。
ですから、現実のあなた自身の使用環境において、実際の速度を評価する必要があります。
高速化の決め手はボトルネックを見つけること!
通信速度は通信経路にある全ての通過点の速度影響を受けますが、最終的に一番遅い部分の速度で決まります。この制約部分をボトルネックといいます。
従って、高速化は、このボトルネックを見つけて、改善することを意味しています。
インターネットアクセスの通信速度を決めている主な要素は次の3つです。
通信回線自体の通信方式や規格の違い
回線の物理的な速度限界と用いられる通信方式(変調方法やプロトコル)によって、通信速度が決まります。
インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)
通信速度はプロバイダ側の設備の処理速度に依存します。
正確には、インターネット・サービス・プロバイダ(ISP)と言います。自社の独自回線や他の通信事業者から借り受けた回線を相互に接続することで、インターネットへ接続します。ユーザーは、プロバイダと契約することでインターネットへ接続することができます。プロバイダの提供する主なサービスは、インターネットの接続、電子メール、Webページ、IP電話などです。
プロバイダは契約ユーザーからの信号をインターネットに接続しているだけなので、一見、速度には影響していないように見えますが、IPアドレスを照合する役割の認証サーバなどの設備により信号を読み取って処理をしているため、通信速度はプロバイダ側の設備の処理速度に依存することになります。
また、接続者数が増加して、サーバーに対する負荷が大きくなると(一人のユーザー当たりの)速度は遅くなります。
通信経路上における端末や利用環境の違い
具体例を挙げると、例えば、auひかりホームX10ギガ/ホームV5ギガには次のような注釈が付いています。
★1:ベストエフォート型サービスです。記載速度は技術規格上の概ねの最大値となり、実使用速度を示すものではありません。
お客さまのご利用環境、回線の状況などにより大幅に低下する場合があります。
ホームゲートウェイ内蔵の無線LANご利用(有料)時の通信最大速度は、最大2.4Gbps(Draft IEEE802.11ax)/1.7Gbps(IEEE802.11ac)となります。
接続先までの通信速度は機器の能力に依存します。
<推奨パソコンスペック>●LANポート10GBASE-T以上 ●LANケーブルカテゴリ6a以上
引用元:auひかり
つまり、実質的な速度は、ルーター(ゲートウェイ)、パソコン、LANケーブルの影響を受けるということです。以下、それぞれについて説明します。
インターネットアクセスの通信方式と通信速度
下の関係は右に行くほど、高速であることを示しています。
ADSL<CATV<無線回線(モバイル)<固定回線(光回線、その他回線)
以下、各通信回線について概要を説明します。
高速化の観点から、光回線(IPv6/IPoE接続)を用いたインターネット接続が最も有利であると言えます。※無線回線については『WiMAXの特徴や高速化の取り組み』をご参考ください
光回線各社の特徴とメリット/デメリット
光回線を用いてインターネット接続サービスを提供している各社の特徴とメリット/デメリットを解説していきます。
フレッツ系/光コラボの特徴(メリット・デメリット)
ドコモ光、ソフトバンク光、BIGLOBE光などNTTフレッツ網を使ってサービスを提供しています。全国対応した光回線で、サービスも充実しているので、ユーザー数も多く、プロバイダがセットになったプランがあります。
auひかりの特徴(メリット・デメリット)
auひかりはKDDI独自の光回線と一部地域はNTTの光回線を借り受け、自社の設備と通信機能により、高速通信を実現しています。
<auひかり 10ギガ・5ギガの速度変更受付中のau one net以外のプロバイダ(2018年4月2日時点)>
・@nifty
・BIGLOBE
・So-net
※その他プロバイダをご利用中のお客さまは、各プロバイダに直接お問い合わせください。引用元:auひかり
NURO光の特徴(メリット・デメリット)
NURO光はNTTがもつ光回線の余剰部分(ダークファイーバー)を借り受け、自社の設備と通信機能により、高速通信を売りにしています。
電力系回線の特徴(メリット・デメリット)
各地の電力会社が所有する独自回線を使って、電力提供エリア限定のサービスを行っています。
日本全国各地、電力会社ごとにインターネットサービスがありますが、ここでは、コミュファ光とメガエッグを例にとり説明します。
光回線が遅いと感じた際の高速化への対応方法・手順
光回線の高速化への対応は、段階を踏んで高速化対応を行い、実際に使用して速度を体感した上で、不満なら次の高速化対応に進むという方法をおすすめします。
上記の考えに基づいて、高速化への対応を以下の①から③の3つのステップに分けて解説します。
現在のご自分の状況に合わせて、途中から読んでいただいても結構です。
それでは、それぞれのステップについて、詳しく説明していきます。
IPv6/IPoE(IPv4 over IPv6)への対応
高速化の第一歩は、IPv6/IPoE(IPv4 over IPv6)に対応することです。※最大通信速度:~1Gbps
まだ、IPv4/PPPoEを使用してていたり、ルーターがIPv6/IPoE(IPv4 over IPv6)に対応していない場合は速度が~200Mbpsに制限されてしまいます。
IPv6/IPoE(IPv4 over IPv6)に対応すること、これは必須条件です。
それは、ある問題の解決策として、IPv6/IPoE(IPv4 over IPv6)への移行が既に進んでいるからです。
インターネットの接続方式の違いや特徴
現在、使用されているインターネットの接続方式を整理すると下表のような組み合わせになります。
縦軸IPv4/IPv6はアドレスを含めたプロトコルの違い、横軸のPPPoE/IPoEは通信方式の違いを表しています。それぞれの組み合わせにより、4つのパターンが存在しています。
従来型(現行型)は左上の接続パターン、右下が次世代型パターンですが、これは既に現在も使われ始めていて、今後、全てがこの接続パターン(IPv6 IPoE接続)に置き換わるものと思われます。
従って、左下と右上の接続パターンは次世代型に置き換わる過程での過渡的な接続パターンと考えて良いでしょう。
Type | PPPoE (Point to Point Protocol over Ethernet) | IPoE (Internet Protocol over Ethernet) |
---|---|---|
IPv4 (Internet Protocol version4) | IPv4 PPPoE接続 従来型 低速 最大200Mbps ※電話回線によるPPPのイーサネットへの応用 | IPv4 IPoE接続(IPv4 over IPv6) 過渡的 高速 最大100Gbps ※IPv6 IPoE接続によるIPv4サイトへのアクセス方法 |
IPv6 (Internet Protocol version6) | IPv6 PPPoE接続(トンネル方式) 過渡的 低速 最大200Mbps | IPv6 IPoE接続(ネイティブ方式) 次世代型 高速 最大100Gbps ※Ethernet本来の接続方式 |
※PPP:Point-to-Point Protocol
IPv6 PPPoE接続(トンネル方式)を使用する場合は、『マルチプリフィックス問題』回避のため、『IPv6アダプタ』が別途必要になります。
マルチプリフィックス問題とは?
IPv6ネットワークであるNTT東西のNGNを経由して、IPv6インターネットに繋ぐと、NGN(次世代の情報通信ネットワーク)とIPv6インターネットから合計2つのIPv6プレフィックスがユーザーのパソコンに配られてしまうという不具合
それぞれの接続パターンについて特徴を解説します。
IPv4 PPPoE接続 従来型
PPPoE接続は「PPP over Ethernet」の略で、電話回線を前提とした技術をイーサネットに応用したものです。
IPv4 IPoE接続(IPv4 over IPv6)過渡的形態
IPv6 IPoE接続を使って、IPv4サイトへ接続する方法で、IPv4 over IPv6とも呼ばれています。
IPv6 PPPoE接続(トンネル方式)過渡的形態
PPPoE接続を使って、IPv6サイトへのアクセスが可能になる方法で、トンネル方式とも呼ばれています。
IPv6 IPoE接続(ネイティブ方式)次世代型
IPoEは「IP over Ethernet」の略で、直接インターネットに接続する方式であり、最終的なアドレス枯渇問題の解決策となっています。
接続事業者(VNE)とは?
VNE(Virtual Network Enabler)とは、ISP事業者(プロバイダ)に対して、IPoE接続サービスを行うために必要となるネットワーク設備や運用機能等を提供する事業者のことです。
IPv6/IPoE(IPv4 over IPv6)対応は高速化に必要な理由
理由その1:IPv4アドレス枯渇への対策
ユーザーがプロバイダ経由で、インターネットと接続する場合、今まで使われてきた方式をIPv4/IPPPoEと言います。IPv4とはアドレスのバージョンを示し、IPPPoEは接続方式を表しています。
速度もIPPPoE接続方式の最高速は200Mbpsと速くはありません。
しかし、根本的な問題は速度ではありません。IPv4のアドレスのバージョンでは、アドレス数が近い将来、枯渇してしまうというのが根本的な問題です。
このアドレスの枯渇の解決策として導入されたのが、新しいアドレスバージョンであるIPv6です。
IPv6の使用により、今後どれだけインターネットのユーザーが増えても 、枯渇が考えられないほど、多くのアド レスを利用できるようになります。
ただし、注意点としてIPv6のアドレスバージンを用いるには、接続方式もIPoEという新たな接続方式を用いる必要があることです。
つまり、これまでのIPv4/IPPPoEという、アドレスバージョンと接続方式からIPv6/IPoE(IPv4 over IPv6)というアドレスバージョンと接続方式へ変更しなくてはならないということです。
理由その2:通信速度の高速化
NTT東西が提供する次世代ネットワーク(NGN)では、PPPoE接続方式の場合は下り最大200Mbpsの帯域制限を掛けている一方で、IPoE接続方式の場合は帯域制限を掛けていません。※NGNのアクセス回線区間のスペック:下り最大1Gbps
つまり、IPv4/PPPoEの通信速度が最大200Mbpsなのに対して、IPv6/IPoE(IPv4 over IPv6)の通信速度は最大1Gbpsとなるのです。※IPv6およびIPv4インターネット接続共に最大1Gbps
また、光コラボ以外(NTT東西以外の通信設備を利用している)の光回線では最大10Gbpsの有料プランも提供されています。
IPv6/IPoE(IPv4 over IPv6)への対応状況
光コラボのプロバイダ各社
下記のブロバイダなど光コラボ対象プロバイダの多くが、既にIPv6/IPoE(IPv4 over IPv6)へ対応しています。
auひかり(KDDI)
IPv6対応のauひかり接続サービス
現在、auひかりでは、IPv6への対応を進めております。
IPv4とIPv6の通信がそれぞれ可能なIPv4/IPv6デュアルスタックでの提供となります。
※IPv6のご利用に際しては、サービス料金以外に追加となる料金はありません。auひかり
対象コース:auひかり ホーム/auひかり マンション
月額利用料 お申し込み 機器&設定 無料 不要 不要 引用元:auひかり
NURO光(ソニーネットワークコミュニケーションズ)
IPv6対応
ご提供内容
IPv4(動的)に加えてIPv6(動的)でのネットサービス利用が可能となるIPv4/v6デュアル方式※のご提供 となります。IPv4アドレスはもとよりIPv6アドレスに対応したインターネット接続サービスをご利用いただ けるようになります。
通信局のソフトウエアを順次バージョンアップの上、ご提供となります。通信局のバージョンアップ後は、IPv6対応機器をご利用のすべてのNURO 光のお客さまがご利用いただけます。対応時期
2013年10月31日 対応完了
お申し込み方法
お申し込みの必要はございません。
ご利用料金
無料でご利用いただけます。
また、NURO光のご利用料金に変更はございません。引用元:NURO光(抜粋)
NURO光の標準プランへの乗り換え(下り2Gbps)
現在、光コラボを使用なら、NURO光に乗り換える方法があります。まず、標準プランを試してみるのが良いでしょう。上りの最高速は光コラボと同じ~1Gbpsですが、下りの最高速度は2倍の~2Gbpsです。
光コラボからNURO光に乗り換えて高速化できる理由
NURO光は独自回線はないものの、NTTの余剰回線(ダークバイバー)を使ってサービスを提供しており、国際標準規格の通信規格とNURO光用に開発されたホームゲートウェイ(ONU)によって、標準プランで下り2Gbpsを実現しています。
auひかり(またはNURO光)の高速プランを契約
NURO光の標準プランでも、やっぱり不満が残る人は、有料の高速プランを契約する方法が残されています。どちらも、地域限定ですので、サービスの提供地域の確認が必要です。
auひかり、NURO光の独自回線や、ダークファイバーは、光コラボのような速度的な制約(限界速度1Gbps)を受けないため、高速化の自由度をもっていて、1Gbpsを超える高速化プラン(~10Gbps)も有料で提供されています。
これが、現在、光回線で提供されている最速のプランとなっています。
つまり、auひかり、NURO光の標準プランから高速プランに変更することにより、現時点での最高速を手に入れることができます。
auひかり(KDDI)とNURO光の高速化への取り組み状況
光回線の高速化のカギを握るのが、PON(Passive Optical Network )です。PONは受動素子により光信号を分岐させ、一本の光ファイバー回線を複数のユーザーで分け合う技術です。
NURO光とauひかり(KDDI)が採用しているPONの変遷を表にしました。表の上から下へとPONの進化と共に最大速度が向上していることが分かります。
また、NURO光はITU規格に、auひかり(KDDI)はIEEE規格に(これまでのところ)準拠しているようです。
回線事業者 | 採用しているPONの名称 | 伝送速度 (最大値) | 規格 |
---|---|---|---|
NTT/auひかり(KDDI)/その他 | GE-PON (Gigabit Ethernet PON) | 下り・上り1.25Gbps | IEEE802.3ah |
NURO光 | G-PON (Gigabit capable PON) | 下り2.5Gbps 上り1.25Gbps | ITU G.984シリーズ |
NURO光 | XG-PON (10Gigabit PON) | 下り10Gbps 上り2.5Gbps | ITU G.987シリーズ |
auひかり(KDDI) | 10G-EPON (10Gigabit Ethernet PON) | 下り・上り10Gbps | IEEE802.3av |
NURO光 | XGS-PON (10Gigabit capable symmetric PON) | 下り・上り10Gbps | ITU G.9807.1 |
冒頭でもお話ししたように、インターネットの高速化において大切なことは、通信速度が自分の使用目的に対して十分な速度であるか、ストレスを感じない速度であるかという点です。
速度の最大数値は参考にはなりますが、ユーザー数や使用環境によって、表示数値が示すほどの速度が出ていないことがほとんどですが、それでもストレスを感じないこともあります。ですから、速度の最大数値だけにこだわり、必要以上に有料プランにお金を払うのは得策ではありません。
ここで強調したいのは、今回説明したように、段階を踏んで高速化対応を実施し、その都度、実際に使用して速度を体感した上で、不満なら次の高速化対応に進むという方法が理に適っているという点です。更に、この方法の利点は対応の結果、不満が残っても後戻りせず、次の段階へ進めることです。
どうか、これらの情報を参考にしてストレスのないインターネットライフを楽しんでいただくことを願っております。